DubDub’s blog

気分が安定しないので、ブログの内容もまとまりません。

ろくでもないと、「わかっていても」

ブログ更新が滞ってしまった。

先週、友人が2人遊びに来てくれたことを一生懸命文字に起こしていた。

だが、人から頂いた幸せはブログにしても味が出ない。

友人が私を笑顔にしてくれた話は、ブログにしなくても、私の中で十分素敵な思い出なのだ。

書いた文字を一文字一文字消しながら、自分の心にしまっておく。

 

 

私は今、入院中だ。

おかげさまで、かなり元気になっている。

だからこそ、有り余る時間を持て余している。

 

暇な私を見かねて、沢山の友達が日替わりで電話をかけてきてくれる。

こんな私のことを思ってくれる友達がいることに、毎日感謝が絶えない。

 

それでも、簡単に時間は埋まらない。

毎日散歩に出かけてみたり、趣味のクロスステッチをしてみたり、柄にもなく本を読んでみたり、限られた外出可能時間をぬってカラオケに出向いたり…なるべくお金を使わず、時間を有効に使おうと頑張っている。

 

それでも、どーしても、ずっと一人なもんだから、誰かと話したくなる。

看護師さんに話しかけ、めんどくさい人だとは思われたくない。

友達に必要以上にダル絡みをして、嫌われたくもない。

そんな私が考えついたのは、一生会わないであろう人にダル絡みをするという遊びだ。

一生会うことのない人間なら、別になんと思われても関係ない。

 

「一生会うことのない人間」

それは、ネットの中にうじゃうじゃいる。

しかし、ネットの中で特定されて追いかけまわされるのも面倒だ。

そこで、私の頭をよぎったのは、電話アプリだ。

現代には、見知らぬ初めましての誰かと電話ができるアプリという物がある。

電話番号でかけるのではなく、アプリのアカウントで繋がるため、身バレする心配はない。

 

電話アプリをアプリストアで調べてみる。

一番最初に出てきたのは、「斎藤さん」。

私たちが学生だった頃に一世を風靡したアプリだ。

しかし、今やそのアプリには卑猥な輩しか残っていない。

こんなことは、有名な話だ。

卑猥なやつらの相手になるのは願い下げだ。

 

二つ目に出てきたのは「Connecting」というアプリ。

口コミを見てみると、どうやらかなり治安はいいようだ。

アプリ説明にも、「出会い目的、下ネタ禁止」とデカデカ書いてある。

どれだけこのルールを守ってるやつがいるのか疑心暗鬼になりながらも、とりあえずダウンロードしてみる。

 

一度使ってみる。

電話をし終わると、自分が設定したアイコンの画像が表示されるらしい。

アイコンは人が写ってなきゃ承認されないらしい。

「ん?人の顔が写ってなきゃいけない時点で、出会う前提じゃね?」とこのアプリの矛盾点を見つけてしまう。

とりあえず、Instagramを開き、そこそこの規模のインスタグラマーの自撮り写真を持ってきて、自分のアイコンに貼り付ける。

アカウント名は、韓国語で「두부」(意味:豆腐)と書き、これでもかと自分とアカウントの情報を遠ざける。

これで身バレ対策はばっちりだ。

 

ドキドキしながら、見知らぬ誰かとつながってみる。

出てきたのは日本人の男だ。

「あにょはせよ」と言われる。

「あ、、、アカウント名韓国語にしたから、韓国人だと思われた…」と、そこまで頭が回っていなかったことを後悔。

変に緊張した私は、かなり高い声で「あにょはせよ」と返す。

電話の向こう側から「韓国人の方ですか?」と聞かれる。

「いっそのこと、身バレ対策で韓国人になった方がいいのではないか?」という考えが頭によぎる。

カタコトで「そうでしゅ」と答えてみる。

「日本語お上手ですね」と言われる。

人生で初めて日本語が上手だと褒められた。

推しの愛くるしい日本語をモデルにしながら、「日本語、、、勉強してます」と言う。

 

このアプリは、ひとりの人と5分間話すことができる。

変な考えから、無理に韓国人を装ってしまったがために、残りの4分が地獄のように思える。

いきなりすらすらな日本語をしゃべり始めても怪しまれるだろう。

かといって、日本人に韓国語をぶちかましても会話にはならないだろう。

八方ふさがりだ。

残るは、アーニャみたいな日本語をしゃべるのみなのだ。

 

幸いにも、男性の方が頑張ってよく話してくれる。

私が適当に聞いた「日本に行く予定があるのですが、どこがおすすめですか?」という無難な話題に、誠心誠意答えてくれている。

なんか申し訳ない気持ちになってきた。

彼の口から出てくるおすすめの場所は、どこも一度行ったことがある場所だ。

なんせ私は日本で生まれ、日本で育った日本国籍の生粋の日本人なのだ。

それでも、彼がおすすめしてくれる場所を、繰り返し発音し、メモするふりをしながら時間を進めていく。

最後に「カムサハムニダ」と言い、電話が終わる。

 

相手の顔写真がスマホに大きく表示される。

今、しゃべってくれた健気な彼は、ヤンキーみたいな見た目をしている。

私の人生で一度もしゃべったことのない部類の人間だった。

多分これからもないだろう。

正直、電話が終了し、彼の写真を見て思ったことは、「こっわ」だ。

まぎれもない恐怖だった。

しかし、よく考えてみれば、電話で喋った彼は優しかった。

それは、私が韓国人だったからなのか?

日本語で喋っていたらどうなっていたんだろうと思った。

「人を見た目で判断してはいけない」とはよく言うけれど、人間にとって「見た目」という情報がどれほど大きいものなのかを実感した。

 

その後、彼からチャット申請が来た。

そこには、「너와 더 이야기하고 싶다」(訳:あなたともっと話がしたい)と書かれていた。

いかにもグーグル翻訳で訳したであろう韓国語だ。

 

高校生の時、毎週毎週英作文を書くのが面倒で、時々グーグル翻訳に丸投げしていた私。

添削してくれる外国人の先生が「翻訳機を使って書いたのは、わかるからね」と怒っていた。

それでも、「うまくグーグル翻訳使えばバレないだろう」「私も英語の知識0なわけじゃないし」「ちょっと変だなってところは自分で修正入れてるし…」と高を括っていた自分を、数年越しに嫌いになった。

 

そんな彼からのメッセージに、「この先も韓国人を演じ続けるのは無理だ」と思う。

かと言って、今更正直になるわけにもいかない。

「逃げる」しか考えつかなかった。

アプリの設定の一番下のログアウトボタンを押し、アプリをそっと閉じた。

 

見知らぬ人と話すのも一苦労だと思う。

いくら知らない人が相手でも、嘘をつくのは申し訳なく感じる。

日本人と話していると、なんだかんだで親近感を感じてしまうから余計にだ。

 

そんなこんなでいつも通りユーチューブを見ていると、広告に韓国の電話アプリが出てきた。

電話アプリはもうこりごりなはずだが、「韓国」という2文字が気になった。

一旦、広告からアプリストアに飛んでみる。

「Maum」というアプリだ。

「Maum」という単語は、韓国語で「こころ」という意味だ。

素敵な名前だなと思いながら、口コミ欄を見てみる。

「言語交換で使っている人が多いです」と書かれてある。

「確かにだ。ただ暇電するのではなく、言語学習を目的とすれば、より生産性のある時間になるのではないか」と思う。

自分の韓国語力を試す意味でも、一度使ってみようと思う。

 

使ってみると、前のアプリみたいに自分の写真を求められることもない。

何なら、アカウント名も勝手にアプリが決めてくれるので、悩む必要もない。

ただ、任意で話題になるような情報を書き込む欄があるくらいだ。

職業、趣味、MBTIをそれなりに書き込んでみる。

趣味は歌を歌うことにしておいた。

「MBTIの話題になったら、あんまり詳しくないから若干困るな…」と思いながらも、一応ESFJと書いておく。

同じESFJの仲間を見つけられた試しがないので、ワンチャン見つかるのではないかという思いで書き込む。

※MBTI:個人がどう世界を認識し、物事への決定を下すかについて16種類のタイプで分類したもの。血液型占い最強バージョンみたいなやつ。

 

世界の誰かとつながってみる。

だいたい韓国人とつながる。

みんな日本語がうまい。

そして、だいたいが日本旅行に行く予定がある。

しかも、「福岡→大阪→東京」と3都市巡る人が多い。

おすすめの寿司のネタを聞かれる。

かっこつけて「えんがわ」という言葉を教え込む。

私の韓国語も褒めてくれる。

気分がいい。

 

女の子とつながったときは、大体お互いにかわいいと褒め合う。

声しか聞こえていないのに、何がかわいいんだかよくわからないが、「かわいい」には「かわいい」で返すのが礼儀だ。

私が日本語をちょっと喋れば、みんなして感激しながら「かわいい」と叫ぶ。

日本語ってかわいいのか?

まぁ、でも悪い気持ちにはならない。

 

趣味が歌というのを見て、一緒にイントロクイズをした子もいる。

私はKPOPで出題し、相手は私にJPOPを出題するという謎ルールを決めた。

意外と相手がマイナーなJPOPを出題してきたりするので面白い。

 

同じESFJの子には未だ出会えていないが、「珍しいね!!」と言われることは多い。

MBTI本気勢の韓国人にそう言われるのなら、珍しいのだろう。

MBTIの話題が上がる度に、「アルファベット4文字で人の性格を知ろうとする人間の発想って面白いな」と思う。

相手のMBTIを聞いても、それがなんなのか私にはわからない。

MBTIを熟知している人と出会うたびに、その熱量に圧倒される。

 

時々、インドネシアアメリカの人とつながることもある。

お互い、つたない韓国語で会話する。

英語しか喋れないアメリカ人やらイギリス人とつながったときは、ノリでごまかす。

ちゃんとした英語が喋れたのなら、もっと面白い話ができるのだろう。

 

一回、ウクライナ人と巡り会ったときは、若干話題に困った。

ウクライナの支援Tシャツ、頑張って買ってます。」なんて口が滑っても言えなかった。

安易に応援してますなんて言えない。

結局、戦争の話題には触れないまま(触れられないまま)、KPOPのアレコレを話して終わった。

それでほんとによかったのだろうか?

 

いろんな国の人と簡単にしゃべれるこの時代。

世界は思った以上に丸いようだ。

「好き」がつながれば、言語の壁なんて簡単に超えられる。

そして、なにより、若者の日韓関係は明るい。

 

このアプリは、一回の電話で8分会話できる。

電話が終わった後にチャットがやってくることもない。

お互いがお互いの国のことを知ろうとしてる、世界平和な人しかいない。

私は、時々このアプリで世界の人と会話するようになった。

 

 

しかし、このアプリにも、稀にカトクを交換しようと言ってくる人はいる。

私も、ヲタ活用にカトクがあることにはある。

カトクはラインと違って、何個もプロフィールを作ることができ、相手に見せるプロフィールをカスタムできる。

簡単に言えば、身分を偽造しやすいということだ。

私にとってカトクは、ラインのように、自分のアカウントが消えたら困るわけでもない。

やばいやつとカトクを交換してしまったとしても、アカウントは捨てられる。

私の中で、カトクなら交換OKという自分ルールを決めた。

※カトク:ラインみたいなメッセージアプリ。カカオトークの略。

 

「このアプリにいる稀にカトクを交換したいと言ってくる人」それはだいたい、「軍隊にいる子」という法則に私は気づいた。

私が入院して暇なように、向こうも入隊して暇なことはないだろうが、「寂しい」のだろう。

海軍にいる子は、訓練が結構多い。きついらしい。

島から出れないのが、きつすぎると言っていた。

一般の部隊にいる子は、訓練より仕事が多い。

彼の軍でのお仕事とは、カラオケ機のDAMを作ることらしい。

私がお世話になっているDAMはもしかしたら彼の作ったものなのかもしれない。

推しが入隊するときは、ぜひとも楽な部隊に配属されてほしい。

そんなこんなで、韓国軍の実態を知りつつ、今のところ楽しく、気が向いた時に返信するような生活を送っている。

 

 

入院し始めの頃、「Maum」をよく使っていた。

しかし、この頃飽き始めている。

最初に比べると、アプリを開く回数はかなり激減した。

 

そんな今日この頃、事件は起こった。

 

2週間ぶりくらいに、私は久々「Maum」を開いた。

久々に韓国語を話すことになるので、緊張した。

誰かと、つながった。

 

「안녕하세요」

韓国の男の人だ。

「あにょはせよー」と久々に韓国語を発する。

こういったアプリでは、大体初めに、今何しているかを聞くのがお決まりだ。

電話している相手に今何しているのかを聞いても、本当は「電話をしている」という答えが正解なことはわかっている。

しかし、大体何しているか聞かれたら、「この電話をする前に何をしていたか?」という質問の答えを答えればいい。

とりあえず、相手に「지금 뭐하세요?」(今何されてますか?)と聞く。

電話の向こうから、「집에 가능 중」(家に帰ってる途中)と返ってくる。

だいたい、このターンをすることで、相手が日本語をしゃべりたいのか、韓国語で喋りたいのかが分かる。

この人とは韓国語で話すことを心に決める。

 

特に話を膨らませそうになかったので、スマホの画面を覗き、彼のプロフィールを見てみる。

すると、職業欄に「배우」(俳優)と書いているではありませんか。

私はここぞとばかりに、「혹시 진짜 배우님이세요?」(もしかして本当に俳優さんですか?)と質問する。

すると、「내 배우활동 하고있어요 가수나 모델도 하고있구요」(はい。俳優業してます。歌手やモデルとしても活動してます)と返ってくる。

ミーハーな私が踊り始める。

その後も、「まだ花は咲いてないですが、頑張ってます」的なことを言っていたので、「まだまだですよー!絶対売れますよ」と適当に返す。

彼が私と同い年(22)であることはプロフィール欄を見て知っていたので、それなりにいい感じのお世辞を言う。

私の脳内では、「なーんだ。売れてない俳優か…興奮して損したぜ」と思ってしまっていた。

 

そんな私の気持ちが伝わったのか、間ができたのか、相手から「今何してるのか」質問してきた。

私は正直に、電話かける前に見ていたドラマの名前を答えた。

そのドラマとは、Netflixで配信されている「わかっていても」という韓国ドラマだ。

私はこのドラマをとても気に入っており、何回も繰り返して見るほどだ。

何が好きかって、このドラマのすべてが好きだ。

脚本、キャスト然り、照明、音響、カメラワーク、すべてが芸術的なのだ。

 

私は、電話越しの彼に「わかっていてもというドラマの3週目を見てました」と伝えた。

すると、「それ、俺出てんだけど」と返ってきたのだった。

自分でまだ売れてないと言っていたので、さすがに期待していなかったが、「わかっていても」に出ているのなら、それはそこそこの俳優なのではないかと思ってしまった。

確かに、「わかっていても」に出てくる俳優は、若手の俳優が多かったりする。

自分が今電話している相手が、私がさっき出てたドラマのキャストだと思うと、一度枯れた興奮もすごいスピードで蘇ってくる。

 

さすがにテンションの上がった私は、ミーハーな質問をした。

「ハンソヒ様って実際に会ったらどんなんですか?」と聞いた。

ハンソヒ様とは、このドラマのヒロインを務められている女優さんだ。

私がこのドラマを好きなのは、ハンソヒ様演じるナビという役がとても美しく、上手であるからという要因が大きい。

いわば、私は、ハンソヒ様のファンなのだ。

電話の向こうからは「現実のものとは思えないほどに美しい。高貴な人だった」という感想が聴こえてくる。

実際にあった人でも現実感を感じない美貌ってどれほどのものなのだろうと思いながら、「カムサハムニダ」と、変な質問に付き合ってくれたお礼を言う。

 

そして、私は考えた。

「この人、何役なのだろう。」

声に特徴はない。

一瞬、何役か聞こうか迷った。

 

しかし、彼が何役なのか知った瞬間に、自分の中で完成しているドラマの世界観は、きっと崩壊する。

もしも、自分の大好きなキャラクターが自分と喋ってるとしよう。

とても嬉しいことだが、幻滅もする。

ドラマと現実は地続きでないからこそいいのだ。

それをこのアプリで現実のものと化してしまうには、ドラマを作ってくださった皆様に申し訳ない。

彼には悪いが、「どの役をやられてたんですか?」と深堀はしないことにした。

 

それでも、収まらぬ興奮に身を任せ、初めて自らカトクを聞いた。

「すいません。もしよければ、カトク交換してくれませんか?」

恐る恐る言ってみた。

「あ、わかりました。ID言いますね。」

意外とあっさりカトクを教えてくれた。

しかも、自らIDを言ってきた。

言われたIDを打ち込んで、スタンプを送る。

電話が切れた。

制限時間が来たようだ。

 

翌朝、スマホを開くと、彼からカトクが来ていた。

「おはよう」と書いてある。

「おはよう」とそのまま返す。

一晩明け、私の興奮は収まっていた。

 

朝、シャワーを浴びながら考えた。

「自らカトクのID教えちゃうような脇甘甘な俳優ってどうなのよ?」

「もし、自分が俳優をやってたとして、職業欄に俳優って書いちゃうのって、どうなのよ?」

「自分の推しがこの人と同じ行動取ってたら、ファンとしていたたまれない気持ちになるよな」

「きっと、プロ意識のない人なんだろうな」

「ってことは、きっと大したことのない俳優なんだろうな」

私のなかでの彼の印象が、昨晩とは考えられないほど、だだ下がっていた。

冷静になればなるほど、彼の行動と彼の職業のつじつまが合わなくなる。

そして、頭の中を占めるのは、「推しはこんな行動取るような人じゃないはずだよね?」だ。

サービス精神が旺盛なのか、ただただプロ意識が足りてないのかよくわからない彼の行動により、推しへの信頼まで揺らぎ始める。

※推し:私が好きな韓国のアイドル。

 

お昼。

ご飯を食べ終わると、カトクが鳴った。

「今日、仕事休みだから電話していい?」とメッセージが来ていた。

不信感でいっぱいだが、もう一度話してみて、考えようと思う。

「OK」と送ると、秒で電話がかかってきた。

暇な私が「こいつ暇かよ」と思ってしまう。

 

電話の向こうでは、昨夜とは、違い結構テンション高めな彼がいる。

「今日休みなんですね」と言うと、「そーなのーーー↑↑最高☆」と言っている。

休みなだけでここまでテンションが上がるのなら、それはすごいことだ。

時間が時間だったので、「ご飯食べましたか?」と聞いてみる。

「今出前なに頼もうか迷ってるの!」と超ウキウキした声が聞こえてくる。

たて続けに「なに頼んだらいいと思うー?」と聞かれる。

 

私は思った。

「君の地域の出前で何が頼めるのかを私は知らない。だから、一概に答えようがないんですけど…」

少しむかつきながら「なにがあるのー?」と聞いてみた。

「ピザ、寿司、ラーメン、ジャジャン麺、チキン、タンスユク(韓国版酢豚)、カルグクス(韓国の麵料理)」などなど、どれも高カロリーなものを列挙していく彼。

 

推しはよく、出前でキムチチゲを頼むと話していた。

出前生活でも健康に気を使っている我らが推しと、高カロリーな物しか挙げてこない彼を比較して、推しのすばらしさを再度確認。

 

適当に「ラーメンはどうですか?」と答えてみる。

「近所に、すごくおいしいラーメン屋さんがあるんだよね」と返ってきた。

「じゃあ、そこで決定ですね!」とノリを合わせる。

 

正直言って、君のお昼ご飯をなぜ私が決めなきゃいけないのかわからない。

適当にラーメンを頼んでもらって、さっさと次の話題に進みたかった。

しかし、彼は「でも俺、寿司が今食べたいんだよねー」と粘ってくる。

私は、「そーなのー?じゃあ、寿司でいいんじゃない?」と返す。

すると「でも寿司は高いからなぁ…」と渋っている。

高くて寿司は無理なんだったら、最初から寿司が食べたいなんて、私に言わないでほしい。

自分の心で思っててほしい一言だった。

 

私は、呆れながら「やっぱりラーメン一択でしょ」と謎にラーメンの肩を持つ。

すると今度は「チキンもいいなぁ」という声が聞こえてくるではないか。

どうでもいい。ほんとにどうでもいい。

「韓国のチキンおいしいですもんね」と頑張って返す。

普通の人なら、こういうコメントに「日本のチキンはおいしくないんですか?」とか返してくれる。

しかし、こいつにそんな気の利いたコメントはできない。

 

私のコメントがなかったかのように、「ジャジャン麵にしようかな」と言ってくる。

こいつは、私の話を聞いていない。

ものすごく独りよがりな会話をしてくる。

結局、この出前の話題で40分。

私は、彼のコロコロ変わる食べたいものに、適当に相槌を入れながら、最後までラーメンを勧めた。

40分の闘いの末、私が勝利を収めた。

塩ラーメンを頼ますことに成功した。

ラーメンと決まってからも、何ラーメンにするかでかなり長かったが、適当に塩を推しておいた。

 

こういった、「ほんとは何を食べたいか決まっていても、一応人の意見を聞くことで満足する」といった状況は、私たちにもたまにある。

特に、女子間ではそういった会話が起こりやすい。

一緒にショッピングに行くと、「これがかわいい、あれがかわいい、これもいいし、あれもいい。」と友達と盛り上がる。

95%、買うことが決定している本命の商品があっても、残りの5%の迷いを埋めるために、人に意見を求めることがある。

でも、その行為が許されるのは、友達の間でのみだ。

まだ親しくもない相手に、そんなことをされたら、さすがにダルい。

せめて、好きな人とそういう会話はしたい。

電話の向こうにいる彼は、私の中でそんな会話をしたい相手ではないことは確かだ。

いくら暇な私でも、相手にダル絡みをされ続けるとさすがにカリカリしてしまう。

 

しかし、そんなダルいターンも一旦終了した。

さすがに疲れすぎて、頭が回らない。

電話を切る言い訳を考えようにも、頭が回らない。

そうこうしているうちに、相手から「コンビニいくー」と言われた。

「いってらっしゃい」と返す。

 

心の中では、「コンビニに行くなら、コンビニ飯でよかったんじゃねーか?」と思う。

ご飯を頼み終わった今、コンビニに行く理由が私にはわからなかった。

「何しにコンビニ行くの?」と興味本位で聞いてみた。

たばこを買いに行くそうだ。

「喫煙者なんかい」と心の中で大きめにツッコミを入れる。

しかし、私がたばこに興味がないため、たばこの話題は続けられそうにない。

間ができた。

 

間が苦手な私は、「なんでたばこ始めたんですか?」と聞いてみた。

彼女と別れて辛かったから、たばこを始めたらしい。

「ひどい別れ方されたんですね」と適当に相槌を入れておく。

すると、「彼女とクラブに行ったとき、目の前で彼女が違う男とキスをした」と別れた詳細を教えてきた。

そんなことが気になって、「ひどい別れ方されたんですね」と言ったわけではない。

 

しかし、なかなかパンチのきいたエピソードだ。

心の中で、「こいつが彼氏なら、他の男とキスをした彼女の気持ちも若干わかるかもしれない」と思ってしまった。

電話越しでは「だから今や、たばこが彼女だ」と語っている。

なかなか気持ち悪い発言だ。

 

忘れかけていたが、彼は芸能の仕事をしているはずだ。

「クラブに彼女と行くのは、さすがに軽い行動過ぎないか?」とまた考えてしまう。

電話越しでは、自作のタバコが吸いたいソングを歌っている。

もう訳が分からない。

 

気になるのは、歌声と音程だ。

音痴ではない。

しかし、上手すぎるわけでもない。

私でも、あのくらいは歌える。

ほんとに芸能人なのか?と疑う。

 

話題を変えて、「なんで、俳優なのに電話アプリやってたんですか?」とほんとに聞きたかったことを聞いてみる。

失礼な質問ではあるが、ここまで変な奴だと、その質問も聞きやすい。

「日本語勉強のため」と返ってきた。

まさかとは思っていたが…

 

ちなみに、ここまでの会話は、オール韓国語だ。

「ここに日本語ネイティブの私がいるのに、日本語をこれまで一言も発っさない人が「日本語勉強したい」とか言うなよ」とムカついた。

そのムカつきが届いてしまったのか、彼から初めて日本語が出てきた。

「家着いた。出前来てた。」だった。

そこまでへたくそではない。

「よかったねー。たばことごはん、どっち先食べるの?」と日本語で聞いてみた。

 

返事が返ってこない。

しばらくして、「結婚したい」と日本語で返ってきた。

私は聞き間違えたのかと思い、「え?」と聞きなおす。

返事は返ってこない。

日本語を間違えたのかと思い、「韓国語で言って」と韓国語で伝える。

韓国語で「結婚したい」と返ってくる。

聞き間違いではなかった…

「え?誰と?」と日本語で聞きなおす。

返事は帰ってこない。

見越して、韓国語で「え?誰と?」と再度聞いてみる。

返ってきたのは、「タバコと」。

 

私にどう反応してほしいのだろうか?

まず、「タバコと結婚したい」そんなことは知ったこっちゃない。

法律でも改訂して、さっさと結婚してもらえれば、幸いだ。

そして、何より、私の日本語に一つも反応が返ってこない。

日本語がわからないのなら、「ゆっくり言って」や「もう一回言って」などと言えばいい。

これまで韓国語で話していたのだから、私に「韓国語で言って」と言えばいいだけの話しではないか。

わからなければわからないと伝えてくれればいいだけの話だ。

 

「わからない」の一言がいえないやつ。

絶対にプライドが高い。

 

そして、脈絡のない「結婚したい」。

この人は、言葉のキャッチボールというものを知らないのだろうか?

思い返してみれば、初めて喋った日も、いきなり「雨が怖い」と言ってきたことがあった。

その時は、電波がうまくつながらなくて、話の流れがあやふやになっただけだと思っていた。

だが、今考えると、それも立派な兆候だった。

どちらにせよ、この人は、ちょっと良く分からない言葉を突然発する人なのだと認識できた。

 

そして、無事出前は届き、私の耳には、ずるずると麺をすする音が届くようになる。

友達と電話しているとき、物を食べている音、水を飲む音、その他生活音は、なるべく相手の耳に入らないように配慮するものだ。(私の中では)

なるべく、イヤホンを付けたままものを食べないようにしたり、音をあまり出さないように気を使って食べるのが、最低限のマナーだと思っていた。

しかし、そんな配慮の欠片も見当たらない。

もはや、モッパンを見ているかのような、ASMR度合いだ。

ズルズル麺をすする音、クチャクチャ噛む音…

「おいしそうだね」の一言しか出てこない。

※モッパン:ユーチューブとかにあがってる、食べ物を食べる動画のこと。「食べる放送」の意味。

※ASMR:細部の音まで聞こえるような様。

 

こちらは、病院食がおいしくなくて、毎日腹ペコなのに、ずいぶんとおいしそうな音が聴こえてくるのも腹が立つ。

 

彼が食べ終わって発した一言。

「俺、9月にモデルの撮影で日本いかなきゃなんだよね…ダイエットしなきゃ」

呆れて言葉に困る。

我々一般人がおいしいものを食べて、「痩せなきゃ」「ダイエットしてるのにー」などとほざくのは、何も悪いことではない。

しかし、彼はモデルとしてお金をもらってる人だ。

「少しは、プロ意識もとうぜ?」と思ってしまう。

 

私は、そんな彼の最後の一言にK.Oを食らった。

もし、彼がほんとに俳優、モデル、歌手だったとしても最悪だ。

ただのプライドが高い一般人だとしても、めんどくさすぎる。

私は、真昼間に「ごめん眠くなってきちゃった…寝るね」の一言を放ち、電話を切った。

電話を切ると、カトクには「おやすみ」と来ていた。

返す気はない。

 

私は、散歩に出て、流れる川を見ながら、自分に問いかけた。

「ほんとは、最初に電話した日からプライド高そうな奴だと分かっていたよね?」

「なのに、なんで俳優の二文字で見なかったふりをしたんでしょう?」

 

これまで、電話アプリでいろんな人と話してきた。

奴は、確実に私が話した人の中で、一番秘めたる凶器を抱えた奴だった。

 

翌々日、「今から電話していい?」と追いメッセージが来ていた。

返信はしないまま、既読だけつけてブロックした。

 

おかげで、ブログが更新できた。

俳優なのかもしれない君、ありがとう。

 

(ここに出てきた彼は、彼がそうであっただけにすぎません。主語を大きくするのはやめましょう。)

自惚れと謎の気負い

昨日、初めて自分の文章を友達に読んでもらった。

学校で自分が書いた感想文やら意見文やらが、勝手に通信に載ることはあった。

だが、自らの意志で人に文章を発信したのは初めてだった。

初めて自分のブログのアクセス数が100を超えたことに、興奮を隠しきれなかった。

 

昨日の記事。

実は、入院中の様子を親族に伝えるために書き始めたものだった。

「親くらいなら適当な文章を書いても別にいいだろう」と思っていたが、さすがに祖父祖母に適当な文章を見せるわけにはいかない。

久しぶりに本気で文字を書いてみた。

※の注意書きも、祖父がわかるように意識して最初に書いておいた。

 

文章を書きながら、小学生の頃を思い出した。

小学生の時、長い休みができる毎に、奈良にある祖父の家に遊びに行っていた。

祖父と祖母は、必ず毎日どこかに連れて行ってくれた。

楽しませてくれた。

その代わり、「毎日日記を書く」ということを課されていた。

 

毎朝、朝ご飯を食べ終えた者から、日記を書き始め、書き終わったら祖父のところに日記を持っていき、読んでもらう。

だいたい一回はダメ出しを食らう。

適当に書くなど論外だ。

祖父のOKが出ないと私たちは遊びに連れてってもらえない。

いくらプールに行くことが決まっていようと、日記が終わらないと出発できない。

妹と、どっちが先に書き終わるかを競っていた。

 

そんな私たちの日記は、夏休み後、冬休み後の担任の先生の仕事を増やしていたに違いない。

膨大な量の日記に、一つ一つ赤ペンでコメントを書いてくれた先生方には感謝だ。

日記の返却が一番遅かったのが、3、4年を担任してくれていた「ごえもん」というあだ名の先生。

彼は今、元気にしているのだろうか。

小学校教育を学ぶ側になって、初めて自分を担任してくれた先生方の凄さに気づく。

 

そんなこんなで書き終えたブログを、親族に送り付けた。

小学生の頃の日記を読んでもらってる時の気持ちが、色鮮やかに蘇ってきた。

 

更に、「もしかすると、イケてる文章なんじゃないか」と思ってしまった私は、Instagramの親しい友達約20名にブログのURLを公開してしまった。

するとなんとまぁ、意外とみんなが読んでくれたので驚きだ。

 

ただ、「好き」と伝えてくれる友達。

シンプルな言葉に胸を打たれる。

「また更新したら教えて」と言ってくれる友達。

飾らない言葉に、空も飛べそうな気分になる。

「久しぶりに悠香と話してる気分になった」と言ってくれた友達。

久しぶりに自分を表現できたんだと思い、幸せを感じる。

ブログ報告のインスタを更新して、すぐ電話をかけてきてくれる友達。

彼女には、私が苦しむ一部始終をお見せしてるというのもあり、目には涙がにじむ。

 

みんなの大切な時間を、私の文章に当ててくれたこと。

いろんな人に自分の言葉が届いたかもしれないこと。

忘れかけていた、生に対する実感が持てた。

「自分が自分で生きている。」と思えた。

幸せな経験をありがとう。

 

父からは、「本はいいですよ。今日買えなかったお目当ての本も予約してみたら?」の一言。

本嫌いの娘の珍しい行動に、これでもかと本を勧めてくる。

「カラオケ代が高くつかないように」と口うるさく言う癖に、本には惜しみなくお金を使うことを推奨してくる。

趣味の格差問題をここでも感じる。

「歌を歌う」という趣味は、「本を読む」という趣味の前では、無力なのだ。

家族ラインにブログを送り付けたが、4人いるはずの家族で既読が1しかつかない。

妹と母には私の文章は届かない。

 

祖父からは、「文章を書くこと、読むことはいいこと。怠らずに続けよう。」という文字と共に、「病人であることを忘れずに」と体をいたわるメッセージが来た。

祖父は文字を書くスペシャリストだ。

祖父の書く闘病記が、どうやら10万字を超えたらしい。

孫として恥じぬよう、私も文才を育んでいこうと誓った。

トゥースはトウスと変換されて返ってきた。

ほっこりした。

祖母からは、「カラオケ店、予約できないの??」と返ってきた。

私の趣味に理解を示してくれるばあばが大好きだ。

 

辛口のおじさんにも、恐る恐るブログを送り付けた。

予想外にも褒めてもらって、鼻は伸びる一方だ。

「私は今、中国にいます」の文字に、異国まで自分の文章が届いてるんだと、ネットの常識をうれしく思ってしまう。

 

そうして、自惚れ沼にどっぷりつかった私は、興奮冷めやらぬまま、20:20の就寝前投薬の時間を迎えた。

ベッドに横になり、いろんな人にメッセージを返信。

「こんなにみんなが喜んでくれるなら、毎日ブログ書こ!!」

「明日は何書こうかな?」「今日みたいに面白い出来事が明日もあるのかな?」

などと思っているうちに、薬に眠らされる。

 

一昨日散歩したコースを夢で見る。

夢の中で散歩しながらブログのネタを探す私。

夜の2:00、目が覚める。

病棟で気になってる、ピアノがうまい女の子に積極的に話しかける私。

深夜4:00、目が覚める。

夢だと気づく。

「レベルの高い合格点をオールウェイズ出せるブログを続けられるのか」ということで頭はいっぱい。

 

目が覚めたのは、7:30。

寝た感じがしないまま、慌ててナースステーションに歩いていく。

シャワー予約表を祈る気持ちで覗く。

 

自分の名前を書きたい場所はもう埋まっている。

「月曜日のシャワーは日曜日の反動で混むのに…」「なんで7:00に起きれなかったんだろう」と心の中で悲しみながら、2番風呂の枠に自分の名前を記入。

 

さぁ、今日は何しよう?

昨日みたいな面白いことが毎日起こるわけでもないだろう。

素直に、うれしかった私の気持ちを書けばいっか。

 

ちょっとやそっとしたことで大きく揺れる自分の心を、「しんどいな」とも、ちょっぴり「かわいいな」とも思いつつ、一日をスタートさせる。

最高にトゥースな半日

若林正恭:お笑いコンビ「オードリー」を相方の春日と一緒に組んでいる。漫才師。若様とも呼ぶ。

 

今日は日曜日。

私が入院している病院では、日曜日はシャワーが浴びれない設定となっている。

なぜかは知らないが、いくらシャワーを浴びたくても、日曜日は我慢しなければならない。

 

この病院でシャワーをするには、ナースステーションにある紙に名前を記入し、あらかじめ予約をしなければならない。

9:30~15:30まで、30分刻みになっているその紙に、自分の名前を書いていいのは朝の7:00~だ。

私はきれいなお風呂を使いたいので、毎日9:30~10:00の一番風呂枠をめがけて、毎朝7:00に起きては、寝ぼけたままナースステーションへと歩く。

しかし、そんな健気な努力も無意味なのが日曜日だ。

 

今日、日曜日。

朝からやることがないので、午前中はカラオケに行こう!と昨日から心に誓っていた。

病院の最寄り駅の向こう側にある某カラオケチェーン店は「朝カラ」という制度があり、9:00~12:00までは部屋代が50円とお得だ。

このビッグウェーブにのらないわけにはいかないでしょ的なマウンドで、午前中時間ができる日はカラオケに行くことに決めている。

病院から出ていい時間は9:45~。

9:30からそそくさと外に行く準備を始める。

バッグにスピーカーと学生証が入っていることを二度確認して、9:45ピッタリ、看護師さんに「外、行きたいです」と伝える。

他にも9:45ごろのナースステーションには、喫煙に行く方々が今か今かと待機している。

そんな皆さんと一緒に病院を出て、私は一目散に駅の方へと足を進めた。

 

カラオケに行くには、駅(線路)を超えなくてはいけない。

カラオケの目の前には踏切が立ちはだかっている。

その踏切がまぁ、開かずの踏切なのだ。

私は律義に目の前に見えるカラオケの看板を眺めながら、踏切が開くのを待つ。

左の矢印が消えたかと思うと、右の矢印が付き…気づけば時刻は10時05分。

私は15分も開かない踏切の前で立っていたことに気づく。

さすがに見切りをつけて、少し離れたところにある歩道橋まで歩くことにした。

線路を超えて、カラオケにたどり着き、踏切の向こう側を見ると、さっきまで一緒に踏切が開くのを待っていたおじさんがいた。

なんかちょっと嬉しかった。

「性格悪いな…自分…」と思いながらも、自分が歩道橋まで歩いた時間が無駄じゃなかったことを噛みしめた。

 

雑居ビルの3階のカラオケへ、ウキウキな心を隠しながら入店。

入った瞬間、カウンターには思っていたよりたくさんのバイトがいて驚く。

レジはひとつしかないのに、5,6人のバイトがカウンターでひしめいている。

その瞬間、「日曜日に朝から一人カラオケかよ、、、寂しいやつ」とか思われてんだろな…と思ってしまう。(ネガティブ野郎の悪い癖)

そんなことを思いながら、カウンターへ行くや否や、「本日すでに満室となっております。11:00~のご案内となりますがよろしいでしょうか?」とかなり食い気味に言われてしまう。

私はどうせ、11:45には病院に戻らなければいけないので「あ、、そうですか、、なら、大丈夫です。ありがとうございます」と言い残し、カラオケを出た。

カラオケの外には、入る時には見えていなかった、中学生と思われる子たちがグループでカラオケを待っていた。

「そっか、、今日日曜日か…だからバイトもあんなに多かったんだ…やっぱ日曜日にカラオケは難しいんだな」と思い雑居ビルを後にした。

 

途方に暮れた私は、雑居ビルを出て立ちすくむ。

目の前に「本日ポイント2倍」と大きく書かれたスーパーに群がる人々が目に入る。

なんとなくそこに吸い込まれていく。

総菜コーナーをなんとなく探し、「病院食もこういうのでいいのにな…」と思う。

食欲が頭の大半を占めている私は、一瞬、「この総菜を買って、病院に持って帰って食べようか?」と考える。

しかし、病院食についている自分のランクが気になって、断念する。

 

病院食のランクとは、「自分がどれだけ残さずに食べるのか」がA~Fまででランク分けされているものだ。

私はもうすでに、Eランクなのだ。

食べるのが大好きな私だが、おいしくないものは本当に食べれない贅沢野郎だ。

なので、自然とEランクになってしまったわけだ。

しかし、さすがの私もFランクにはなりたくない。

「ここでおいしい総菜を買って帰ることもできるが、そうするときっと今日のお昼ご飯は食べれなくなる。そうなると私はFランクになってしまうかもしれない」という恐怖が、何とか私の食欲を抑えた。

スーパーを後にする。

 

散歩でもして病院に帰ろうかと思い、足が向く方に歩いてみる。

暑い。バッグが重い。

散歩するために出てきたわけではないので、服装や恰好が散歩向きではないことに、ちょっと歩いて、始めて気づく。

目の前にはマックの看板がある。しかも結構綺麗めなマックだ。

「よし、もうここに入ってゆっくりしよう。ってか、涼もう。」と思い、入店。

 

しっかり2階の端っこの席を陣取り、財布をもって1階のカウンターに下りる。

そういえば、今マックでは「平成の大人気商品が再び!!」みたいなのやってるよな?ユーチューブで見たぞ!!と思い、レジに並ぶ私。

しかし、レジのメニューには堂々と「朝マック」の文字。

「今の時間って、朝マックしかないんですか?」恐る恐る店員さんに聞く。

「そうですね。10:30~普通メニューになります」と0円スマイルで返され、何を頼んでいいのかわからず、「わかりました!!また来ます!」と笑顔で返す私。

陣取った席に戻りながら、携帯で時刻を確認すると10:27の文字。

私はこの3分間、何も頼まず席に座って待つという図太さを持ち合わせていない。

「マックに行き慣れてたらこんなことにはならなかったのではないか。」と反省しながら、何もなかったかのように席に置いたペットボトルを持ち、そそくさとマックを後にしたのであった。

 

「さすがに、もう帰ろう。」「今日、私の居場所は外にない様子だ。」と思い、駅の方面へと歩く。

駅に着き、名残惜しさで駅のロータリーを眺めてみる。

目に飛び込んできたのは「本」の文字。

 

大の活字嫌いとして有名な私。

22年の人生の中で、自らの意志で本を読むという行為に及んだ回数が、片手で数えられる範囲だ。(悲しい事実。)

しかし、そんな私にも、今、実は読んでみたい本があった。

歩いて暑かったというのもあり、「とりあえず本屋に入って、涼んでから帰ればいいじゃないの。」そう思い、本日4回目となる入店チャレンジ。

 

何を隠そう、本屋など行き慣れない私は、本屋の中で何をみたらいいのかわからず迷子。

「自分のお目当ての本を、この大量の本の中から見つけられるわけがない。」と早々に諦め、本日4回目となる「退店」の2文字が頭をよぎる。

一通り本屋を一周し、とりあえずお目当ての本をスマホで調べてみることにした。

グーグル検索に「若林正恭 ナナメの夕暮れ」と打ち込む。

1番に出てきたAmazonのページを開き、「あー、ここで頼めれば、店員に自分の趣味を悟られなくて済むのにな」と思う。

しかし、そんなことは言ってられない。病院にAmazonするわけにはいかんのだ。

勇気を振り絞り、男の店員さんにAmazonのページを見せながら「これってありますか?」と聞く。

 

店員さんの第一声「あー、、、」

「うっわ、もう引かれたよ、これ。本屋に来て芸能人の本探すほどミーハーなことはないんだもん。本屋で働くってことは、絶対本好きじゃん。無理無理、そんなん。こんなこと聞いてほんとにすいません。」と心の中でお経を唱え、店員さんについていく。

すると店員さん「この本、今人気だからね…これは置いてないけど、こっちならあるね!」と言い、本棚から若林の別の本を取り出してくれたのだった。

つい、嬉しさのあまり「ありがとうございます!!」と大きな声が出た。

定員さんに出してもらった文庫本の表紙に書かれた「若林正恭 表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」というクセの強い文字の並びをまじまじと眺め、考えた。

 

「どうせ、私だ。これ、買って読まなかったら最悪だぞ?まずは、図書館で借りるとかした方がいいんじゃないの?新品の本買うって、上級者がすることじゃん…」そう思いながら、頭には本好きの妹の顔が浮かんだ。

しかし、一度手に取ってしまったもの。

本の帯には、こちらに向かってほほ笑む若様。

そして、芸人が書く本が面白くないわけがないという謎の信頼感から、私の足はレジへと向かう。

「カバーお付けしましょうか?」と聞かれ、いっちょ前にも「お願いします」と答え、謎の優越感に浸る。

カバーがついた本を片手に、本屋を意気揚々とドヤりながら後にした。

 

こうなったら、止められない。

私は、この本を今すぐ読みたくなった。

しかも、カフェで。

そうだ。いつか自分もしてみたいと思っていた「カフェで本を読み、ゆっくりする」これを叶えるのは今しかない。と思い、駅を見渡す。

私は、スターバックスを探した。

しかし、あったのはドトールだ。

 

「しょうがない。ドトールに入るか。」と思い、本日5度目の入店を決意。

ドトールで失敗することはないという自信もあった。

なぜなら、1年ドトールで働いた経験があったからだ。

この時間はモーニングセットが看板なことも知っている。

何なら作っていた側だ。

 

本を片手にドトールに入店すると、案外綺麗なドトールだった。

私が働いてたとことは違っていいじゃん!!テンションは上がる一方だ。

毎度のごとく席を確保し、レジに向かう。

抹茶のタピオカにきなこソフトが乗った贅沢ドリンクが目に入る。

モーニングセットよりも、ミラノサンドが目に入る。

片手には本。(席に本を置かず持ち歩くという徹底ぶり)

 

私は、モーニングセットでは本に失礼だと思ってしまった。

モーニングセットは思ったよりも手が込んでいないことを知ってしまっているが故の謎判断だ。

私は、ミラノサンドBと抹茶タピオカきなこソフト付きを勢いで注文してしまう。

お会計は、本よりも高くついた。(苦笑)

 

そして、店員さんに申し訳なく思った。

なぜなら、タピオカというドリンクは作るのがめんどくさいため、一番注文してほしくないものだったからだ。

更に、モーニングセットがある時間にミラノサンドを注文してくるやつも、なかなかいけ好かないと働いてた時に思ったことがあるからだ

されて嫌だった行為をダブルコンボで決めてしまった私だ。

そんなこと思っていると、自然と店員さんたちに目が行っていた。

 

店員さんたちは3人。

レジに1人、フードに1人、洗浄が1人と、ベーシックなドトール勤務体制だ。

ドトールでは、大体レジの人がドリンクも担当するのだが、私が頼んだようなタピオカだと手間がかかるため、だれがヘルプに入るのかで気まずくなることがある。

その現象が、私がタピオカを頼んでしまったことにより、目の前で起きていた。

レジのお兄さんは気まずそうに、「タピオカお願いします」とフードや洗浄の人がいる方に向かって言っていた。

しかし、フードに入っている髪さらさら系男子と、洗浄をしている気が強そうなお姉さんは返事をしない。

フード男子と洗浄女子は仲良く談笑しながら自分の仕事をこなしている。

少しすると、フード男子が私のタピオカ作りに取り掛かっていた。

申し訳なさそうなレジの男の子。

「その気持ち、わかるよ。」と全力で言ってあげたくなった。

ドトールの職場環境って、返事してもらえないのが当たり前なのかな?」と、昔の自分を思い出しながら、レジの男の子と自分を重ねた。

 

そんなこんなで、席に着き、本を広げながら、ミラノサンドを頬張る。

そこで「あ、ミラノサンド食べたら、今日の昼ごはん食べれないじゃん。」と病院食ランクのことを思い出す。

しかし、時すでに遅しだ。

目の前には美味しそうなミラノサンドとタピオカ。食べるほかない。

 

本を読みながら、何かを食べるなんてことはしたことがないので、片手で本を持ち、片手でミラノサンドを持ち食べるという器用なことがうまくできない。

私らしく、白い服をミラノサンドからはみ出し落ちたエビで汚した。

結局、片手で食べるのは諦め、本を置き、食べることに集中する。

すると、本を持つ手を使うので、本を持った時に指の跡がつく。

お手拭きで拭いても、指の跡がつくのでちょっぴりイライラ。

改めて本にカバーを被してもらったことに感謝しながら、本を読み進めていく。

案の定、本はとても面白く、どんどん読める。

食べ途中、飲み途中で汚くてすんません。

 

満面の笑みで本を眺めている自分にふと気づき、我に返る。

目の前のカウンターを眺めてみると、さっきのレジ係の男の子がいない。

「シフト終わったのかなー、お疲れだったなー」と思いながら、よくよく見ると、さっきの洗浄女子がレジに入って回している。

しかし、皮肉なことに、さっきのレジの男の子がいた時よりも、店員の人数は減っているのに、お客さんの回転は速いのだ。

 

そのとき、「あ…自分もそういう存在だったんだろな…」と何気なく悟ってしまった。

私はドトールで今日見たレジの男の子よりも仕事がへたくそだった自信がある。

そして、彼よりも確実に嫌われていただろうということも、自覚している。

そう思うと、ほんとに悲しくなってきたのだった。

そして彼には、もっと働きやすい場所があるよと言ってあげたくなった。

そんな社会での居場所的なことをと何気なく考えながら、本に目をやると、同じように社会での自分の居場所について悩み、苦しんでる、著者若林がいた。

ドトールのカウンター一つで、いろいろと勝手に傷ついてる自分を、若様が「わかるよ」と言ってくれてる気がして、最高にトゥースな時間であった。

 

オードリーのオールナイトニッポンを知って、早3年ちょっと。

最初は、「面白い!!」という感情だけだったのに、だんだんと若林正恭という人間の生々しさに惹かれだして、とうとう本まで買ってしまった私。

自分の生きづらさとか、考えすぎな所とか、ただただそれが邪魔だと感じることがかなり多いけれど、若様がそれを芸にしてるのを見ると、決して余計なことじゃないと思えるどころか、そこに価値を付けるのは自分自身なんだと、「一緒に戦おう」と言ってもらえてる気がしていいです。

 

ただのリトルトゥース(オードリーのラジオを聴いてるファンの名前)の半日をたらたらとお届けした感じで恐縮です。

ただ、今日という日もオードリー若林正恭に助けてもらった素敵な日でした。

ありがトゥース!!

完璧じゃない自分

一カ月(四週間)のうち、一週間はいつも潰れる。

いつもの自分ができていたことが、ぼろぼろと欠けていって、不完全な自分が一週間を支配する感覚。

今月も、早々にその一週間が来た。

お腹はすいていないのに、口が寂しくなる。

必要以上に物を周りに置きたがる。部屋が物であふれかえる。

お風呂に入りたくなくなる。

人に会いたくなくなる。

お日様を見ると悲しくなる。涙が出てくる。

大したことのない課題がとても難しい課題に思える。できない。

学校に行くのに勇気が必要になる。90分も集中力が続かない。

 

バイトに休みの連絡を入れた。学校には頑張って行った。

授業中ずっと携帯をいじってあくびをした。行った意味はあったのだろうか。

マックのセット、焼きそば、たこ焼き、ミスドのドーナッツ、チョコモナカジャンボを買って帰った。

虚しさを埋めるように胃に物を詰め込んだ。

ベットに横になって動画を見て気づいたら寝ていた。

起きたら夜だった。

しなければいけないことのように、ウーバーイーツでカツ丼を頼んだ。高い。

空しい。今日自分は何もしなかった。できなかった。

今日までの課題が全部未提出の表示に変わった。できなかった。

バイトにも行けなかった。行かなかった。

罪が重すぎる。

自分で自分の首を絞めた。

明日は普通に過ごしたい。

欲張らないから、自分に課されたことだけは、やり遂げたい。

完璧な自分でいたい。じゃないと余計に苦しい。

明日は起きれるかな?

 

頭が痛い。

 

書くことがない

2日目にして早々に書くことがございません。

これは長続きしない予感です。

わたくし、一人暮らしの大学生なんですけれども、本日は一週間分の食料の買い出しに行ってまいりました。

なかなか、食べ物を買うという行為は頭を使いますね。

どのようにすれば一週間で無駄なく食料を使えるのか、何通りものメニューを考えながらスーパーの中をほっつきまわるのは疲れるということを改めて感じた一日でございました。

そして、食べ物こだわるタイプの私なので、商品を手に取りながら、一つ一つ後ろのラベルを確認していいものを買おうとすると、余計に時間がかかりますな。自分のお気に入りの商品が早くできてくれるといいなと思いながら、いろんな商品を手に取りました。

そして、家事の日だった今日。部屋も片付け、洗濯も一気に回し、料理もして、きれいになった部屋にポスターを張りました。

私の推しは韓国アイドルなわけなんですけれども、韓国のアイドルというのはだいたい新年一発目に「シーズングリーティング」通称シーグリなるものを発売するんです。

このシーグリなるものには、新しい一年を推しと共に素敵に過ごせるようなアイテムが入っています。

まぁ例えば、カレンダーよりも推しが強調された卓上カレンダー、ポスターカレンダー、絶対外に持って歩けないような手帳などが定番に入っております。それだけでなく、ちょっとした写真集にはメンバー1人1人が今年の目標を直筆で書いてあるページがあったりとそんな感じです。

その他推しのグッズ詰め合わせキットみたいなシーグリは、成人の私にとって、チャレンジ一年生スタートキットのようなものです。

あの新しい何かが始まる時にもらえる様々な物たちをあけるときの気持ちは今も変わらず、今年も推しに恥じぬような一年にしようと思いました。

ちなみに話がそれまくりましたが、私が今日部屋に貼ったポスターとは、カレンダーよりも推しの笑顔の方が大きいポスターカレンダーのことです。

毎日毎日この笑顔を見ながら今年もがんばりやす!!

 

DubDub

ボクノート

はじめまして。

今日からブログなるものを始めてみようと思います。

特に誰かに発信したいとかいう思いは微塵もなく、ただただ自分の音をもっと確かに聞いてみたくなったのではじめてみました。(カッコつけてみる)

まぁ、要するに、自分の思いや考えを忘れないように書いていけたらいいな…なんて思ってます。

ただの日記にはならないように。そして、できれば長く続くように、、

 

題名にボクノートなんてつけてしまいましたが、スキマスイッチの「ボクノート」という曲からいただいてます。

自分の中で定期的に戻ってきたくなるようなそんな歌です。

これからは、私的ボクノートをここに書いていきます。

ぼちぼちやっていきます。

新たな一歩に乾杯だい!

 

DubDub