自惚れと謎の気負い
昨日、初めて自分の文章を友達に読んでもらった。
学校で自分が書いた感想文やら意見文やらが、勝手に通信に載ることはあった。
だが、自らの意志で人に文章を発信したのは初めてだった。
初めて自分のブログのアクセス数が100を超えたことに、興奮を隠しきれなかった。
昨日の記事。
実は、入院中の様子を親族に伝えるために書き始めたものだった。
「親くらいなら適当な文章を書いても別にいいだろう」と思っていたが、さすがに祖父祖母に適当な文章を見せるわけにはいかない。
久しぶりに本気で文字を書いてみた。
※の注意書きも、祖父がわかるように意識して最初に書いておいた。
文章を書きながら、小学生の頃を思い出した。
小学生の時、長い休みができる毎に、奈良にある祖父の家に遊びに行っていた。
祖父と祖母は、必ず毎日どこかに連れて行ってくれた。
楽しませてくれた。
その代わり、「毎日日記を書く」ということを課されていた。
毎朝、朝ご飯を食べ終えた者から、日記を書き始め、書き終わったら祖父のところに日記を持っていき、読んでもらう。
だいたい一回はダメ出しを食らう。
適当に書くなど論外だ。
祖父のOKが出ないと私たちは遊びに連れてってもらえない。
いくらプールに行くことが決まっていようと、日記が終わらないと出発できない。
妹と、どっちが先に書き終わるかを競っていた。
そんな私たちの日記は、夏休み後、冬休み後の担任の先生の仕事を増やしていたに違いない。
膨大な量の日記に、一つ一つ赤ペンでコメントを書いてくれた先生方には感謝だ。
日記の返却が一番遅かったのが、3、4年を担任してくれていた「ごえもん」というあだ名の先生。
彼は今、元気にしているのだろうか。
小学校教育を学ぶ側になって、初めて自分を担任してくれた先生方の凄さに気づく。
そんなこんなで書き終えたブログを、親族に送り付けた。
小学生の頃の日記を読んでもらってる時の気持ちが、色鮮やかに蘇ってきた。
更に、「もしかすると、イケてる文章なんじゃないか」と思ってしまった私は、Instagramの親しい友達約20名にブログのURLを公開してしまった。
するとなんとまぁ、意外とみんなが読んでくれたので驚きだ。
ただ、「好き」と伝えてくれる友達。
シンプルな言葉に胸を打たれる。
「また更新したら教えて」と言ってくれる友達。
飾らない言葉に、空も飛べそうな気分になる。
「久しぶりに悠香と話してる気分になった」と言ってくれた友達。
久しぶりに自分を表現できたんだと思い、幸せを感じる。
ブログ報告のインスタを更新して、すぐ電話をかけてきてくれる友達。
彼女には、私が苦しむ一部始終をお見せしてるというのもあり、目には涙がにじむ。
みんなの大切な時間を、私の文章に当ててくれたこと。
いろんな人に自分の言葉が届いたかもしれないこと。
忘れかけていた、生に対する実感が持てた。
「自分が自分で生きている。」と思えた。
幸せな経験をありがとう。
父からは、「本はいいですよ。今日買えなかったお目当ての本も予約してみたら?」の一言。
本嫌いの娘の珍しい行動に、これでもかと本を勧めてくる。
「カラオケ代が高くつかないように」と口うるさく言う癖に、本には惜しみなくお金を使うことを推奨してくる。
趣味の格差問題をここでも感じる。
「歌を歌う」という趣味は、「本を読む」という趣味の前では、無力なのだ。
家族ラインにブログを送り付けたが、4人いるはずの家族で既読が1しかつかない。
妹と母には私の文章は届かない。
祖父からは、「文章を書くこと、読むことはいいこと。怠らずに続けよう。」という文字と共に、「病人であることを忘れずに」と体をいたわるメッセージが来た。
祖父は文字を書くスペシャリストだ。
祖父の書く闘病記が、どうやら10万字を超えたらしい。
孫として恥じぬよう、私も文才を育んでいこうと誓った。
トゥースはトウスと変換されて返ってきた。
ほっこりした。
祖母からは、「カラオケ店、予約できないの??」と返ってきた。
私の趣味に理解を示してくれるばあばが大好きだ。
辛口のおじさんにも、恐る恐るブログを送り付けた。
予想外にも褒めてもらって、鼻は伸びる一方だ。
「私は今、中国にいます」の文字に、異国まで自分の文章が届いてるんだと、ネットの常識をうれしく思ってしまう。
そうして、自惚れ沼にどっぷりつかった私は、興奮冷めやらぬまま、20:20の就寝前投薬の時間を迎えた。
ベッドに横になり、いろんな人にメッセージを返信。
「こんなにみんなが喜んでくれるなら、毎日ブログ書こ!!」
「明日は何書こうかな?」「今日みたいに面白い出来事が明日もあるのかな?」
などと思っているうちに、薬に眠らされる。
一昨日散歩したコースを夢で見る。
夢の中で散歩しながらブログのネタを探す私。
夜の2:00、目が覚める。
病棟で気になってる、ピアノがうまい女の子に積極的に話しかける私。
深夜4:00、目が覚める。
夢だと気づく。
「レベルの高い合格点をオールウェイズ出せるブログを続けられるのか」ということで頭はいっぱい。
目が覚めたのは、7:30。
寝た感じがしないまま、慌ててナースステーションに歩いていく。
シャワー予約表を祈る気持ちで覗く。
自分の名前を書きたい場所はもう埋まっている。
「月曜日のシャワーは日曜日の反動で混むのに…」「なんで7:00に起きれなかったんだろう」と心の中で悲しみながら、2番風呂の枠に自分の名前を記入。
さぁ、今日は何しよう?
昨日みたいな面白いことが毎日起こるわけでもないだろう。
素直に、うれしかった私の気持ちを書けばいっか。
ちょっとやそっとしたことで大きく揺れる自分の心を、「しんどいな」とも、ちょっぴり「かわいいな」とも思いつつ、一日をスタートさせる。